沖縄民謡『芭蕉布』で知られている沖縄伝統の織物を支えている大宜味村の女性たち

沖縄を代表する作曲家 普久原恒勇と作詞家 吉川安一のコンビで誕生した名曲「芭蕉布」。

沖縄民謡の中でも、芭蕉布はさまざまな歌手によって歌い継がれ、現在も親しまれていますが、沖縄県民だけではなく、この歌を聞いたことがあると言う方は多いのではないでしょうか。

私も沖縄民謡の中でも大好きな曲の一つです。知らない方は、まずは聴いてみてください。

芭蕉布とは沖縄の織物のことです。
どこの地方でも、そこの土地で自然にうまれ、何世代にわたり引き継がれてきた伝統工芸があります。芭蕉布もその一つ、沖縄で長年に亘り受け継がれてきた世界に誇れる伝統工芸です。

沖縄旅行をしたとき、芭蕉布の着物を見て、涼しげで自然な風合の美しい織物に魅せられたと言う方も多いのではないでしょうか。

実際に芭蕉布の着物を着てみると、通気性がよく肌触りもさらっとしており、高温多湿な沖縄の環境には良く適しているんだそうです。

現在、芭蕉布は大変高価な印象がありますが、戦前までは沖縄の各地で織られていて、むかし沖縄ではバシャギン(芭蕉衣)と呼ばれ、夏になると身分を問わず多くの人に愛用されてきた、暮らしに密着した普段着だったそうです。

しかし、現在、芭蕉布が織られているのは沖縄本島北部の大宜味村如嘉だけとなってしまいました。

その大宜味村で今も芭蕉布を守り続けているのが人間国宝の平良敏子さんです。この女性の熱い情熱がなければ、現在、沖縄の伝統工芸芭蕉布は存在しなかったのかもしれません。

平良敏子さんは、1921年生まれ、大宜味村喜如嘉の芭蕉布保存会の会長として、芭蕉布作りを次世代に伝え続けており、芭蕉布の技法復興に力をつくしたことが認められ人間国宝に認定されています。

途絶えそうになった伝統工芸を支えたのは女性達の情熱

芭蕉布の歴史は、すでに琉球尚王朝の初期には織られていたと言われており五百年以上の歴史があります。

しかし、一度、その伝統が途絶えそうになったことがありました。その原因は、太平洋戦争勃発です・・・。

その後、終戦後に、芭蕉布を織る母親の姿を見て育った平良敏子さんが故郷である大宜味村喜如嘉で、同じ情熱を持つ喜如嘉の女性達と一緒に芭蕉布の復興に努力を重ねます。

その女性たちの努力が認められ、1974年に国の重要無形文化財に認定されています。

芭蕉布は植え付けから始まり全ての工程が手作業

芭蕉は多年草で種類は、花芭蕉、実芭蕉(バナナ)、糸芭蕉の3種類があります。芭蕉布に使用するのは、糸芭蕉の茎の皮の部分を繊維として使い1枚の布に仕上げます。

芭蕉布は、糸芭蕉を育てる畑仕事から始まり、その全ての工程を手作業で行います。

最初の工程は糸芭蕉の原木の植え付けからはじまります。そして、それを人間の身長よりもはるかに高い3メートルくらいになるまで育てます。

糸芭蕉が、3メートルくらいまで育つと、芯止めされ、葉打ちを年に3回から4回行われます。これは繊維を柔らかくするための工程なんだそうです。

そして糸芭蕉が育ち刈り取りされます。なんと、ここまで育てるのに3年もの時間がかかるそうです。

実は、芭蕉布づくりの作業は糸を織る作業はたったの1%なんだそうです。質の良い糸にするまでの糸芭蕉を育てる工程に時間と労力を注ぎます。

この作業を惜しまない人でないと、この仕事は続けることができないんだそうです。

染料も素材も全て自然のもの

そして、育った原木を織物にするために繊維をはぎ、煮て、染めて、巻き取り、織り、仕上げの洗濯をする。素材や染料、このすべてが自然の素材から作られています。

1mちょっとの繊維をつないで1本の糸にしていくのですが、均一な糸を績むには、熟練した経験がないと難しく、約22,000回つないで、やっと1反分の糸ができるんだそうです。本当に気が遠くなるような作業です。

その1反分を作るには約200~300本の糸芭蕉が必要ともいわれており、半年以上の時間がかり、年間120反ほどしか生産することができない大変貴重な織物です。

現在、芭蕉布が主に作られているのは、先ほど紹介した平良敏子さんが暮らしている沖縄北部やんばる地域の大宜味村喜如嘉人口が約350人の小さな集落です。

芭蕉布に魅力を感じ、この仕事に生きがいを感じている、一握りの女性たちで芭蕉布は守られています。

しかし、芭蕉布作りは大変な作業なため、現在、後継者を育てるのが難しく、いかにして芭蕉布の技術を次世代に受けついでいくのか大変むずかしい問題を抱えているそうです。

芭蕉布の新しい作品『芭蕉布ベアー』

そんな中、次の世代に受け継ぐ作品として海外で注目されているのが「芭蕉布ベアー」です。

「着物だけを作り続けていては、次に世代に受け継ぐことが出来ない。今を生きている人に受けいられる布にならないと。」そんな思いで誕生しました。

芭蕉布ベアーを考案したのは、人間国宝である平良敏子さんのもとに嫁いできた平良美恵子さんです。

実は、すでに芭蕉布ベアーは世界に発信されており、2016年にニューヨークで行われた展示会に出品されています。

そこでは、「とてもかわいい。」「良くできている。」「プレゼントには最適。」など、評価だったそうです。

大宜味村立芭蕉布会館情報

大宜味村喜如嘉には、地場産業の振興を図るため芭蕉布会館が建てられ、そこでは、芭蕉布の後継者を育てるための研修を行ったり、芭蕉布がつくられる製造工程のビデオの上映や、芭蕉布製品の展示や販売を行っています。
着物の他に、帽子やネクタイ、カバン、座布団、コサージュ、テーブルセンター、コースターなど、生活に手軽に取り入れられる商品が豊富に揃えられています。

沖縄に旅行に来たときは、北部の芭蕉布の里、大宜味村喜如嘉に立ち寄り沖縄女性のひたむきな強い情熱に触れてみませんか。

住所 : 〒905-1303 沖縄県大宜味村字喜如嘉454番地
電話番号 : 0980-44-3033
開館 : 8:00~17:00 夏期(4~10月)は17時30分まで。
休業 : 日曜・祝日・年末年始・第2、4土曜日